東フィル定期を聴いた2〜評論家になってみた〜

 

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第2弾は、チョン・ミョンフン指揮「カルメン」を演奏会形式で。

 


実を言うと、オペラを演奏会形式で聴くのはあまり好きではない。どうしてもオペラの方がいいと思ってしまうからだ。

 


そんな考えを気持ちよく覆してくれるような、今回の公演だった。

 


カルメン(マリーナ・コンパラート)とミカエラ(アンドレア・キャロル)の女性陣はさすがの出来、男性陣は私はあまり好みではなかった。もっとも、どんな人が演じても、例えカレラスだって、ホセは気持ち悪くて嫌いになってしまう私です。

ストーカーだよ、気の毒なカルメン笑。

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それはともかく、今回の収穫は、音楽が際立ってすばらしいと感じられたことだ。

これは、演奏会形式の確かな利点だろう。舞台上の演技に気をとられることなく、また、テンポだの間合いだのを犠牲にすることなく、純粋に音楽に集中できる。何回もオペラ「カルメン」を観ているが、今回ほど音楽に集中できたことは、いまだかつて無かった。どの曲もどの曲も良い曲(有名でない曲も)、間違いなくビゼーの傑作だ。一生に一度、神が降りてきて書かせた曲としか思えない。

 

そして、特筆すべきはやはりチョン・ミョンフンの指揮だろう。

演奏会形式ならではの構成、プランがはっきり見えて、本当に気持ちがよかった。曲間の短さ、緩慢さを排した簡潔な運び、スッキリさわやか。メタボなカルメンがダイエットに成功してスタイル抜群の美女になったよう!

 

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実際のオペラでは色々な制約があって、このようにはできないだろう。でも、たまには優れた作品を好きなように音楽作りしたい、そんなチョンさんの気持ちがよく現れていたように思う。

 


長丁場なのに暗譜というのもかっこよかった。

私たち管楽器奏者は得てして暗譜が苦手だが、譜をめくる動作さえ邪魔になっているのかも、と考えさせられるところがあった。

 


良い指揮者は無駄な動きをしない。だからここぞという時のパッションが効果的に伝わる。

 


前回に引き続き、良い指揮者が作品もオケも良くするという、当たり前のようだが、すばらしい恩恵をこうむることができた。

 


ありがとう東フィル。

大きな声では言えないが、コロナウイルスのせいで出来た空席を招待券にしてくれて。